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列島いにしえ探訪 Poster Top
金峯山寺
青瓶 2464

「列島いにしえ探訪」
- み吉野 -



■ 吉野という土地は相当に広い。
 それに気づいたのは、JR奈良駅の観光案内所で、受付の中年女性から道路図を指さされた時である。
「あらあら、たいへんよ。吉野に宿は取ってあるの」
 地図を眺めるとお分かりだと思うが、奈良県の南半分以上、それ全部が吉野郡である。僅かに細い国道が熊野灘へと続く。
 全部を廻り、いくつかを撮影するには、一週間近く滞在しなければならないだろう。私は学生の頃、試験の前に予習しなかったことを思い出した。
 頭をかきながら、カレーライスを食べさせるスタンドの方に歩く。
 旅に出た際、駅の中にあるスタンドで軽い食事をする。
 昼休みだと、そこに常連が来ている。彼らは作業服のまま、中に居るややきついパーマをかけた女性と話していたりする。彼女は前は何をしていたのか。
 すこしこちらは居心地が悪い。
 その土地の言葉や流儀のようなものは、すこしだけ冷たくされることで滲むようなところもある。観光ではなく。
 常連が去ると、スタンドには誰もいない。



■ 街道を過ぎ、私は吉野山の中腹、吉野神社に小型車を登らせていった。
 吉野神社は、明治天皇が後醍醐天皇を偲んで創建したものだという。
 ここで数枚を撮ったが、作品としては使わなかった。若いカップルが、薄く煙る山の方角を眺めていた。
 細い道を昇ってゆくと、左右に視界が開ける箇所がある。
 葛城、金剛の山並みかとも思うが、靄のようなものがかかり、はっきりとは見えないでいる。



2002_10_28
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