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金峯山寺
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■ 吉野という土地は相当に広い。
それに気づいたのは、JR奈良駅の観光案内所で、受付の中年女性から道路図を指さされた時である。
「あらあら、たいへんよ。吉野に宿は取ってあるの」
地図を眺めるとお分かりだと思うが、奈良県の南半分以上、それ全部が吉野郡である。僅かに細い国道が熊野灘へと続く。
全部を廻り、いくつかを撮影するには、一週間近く滞在しなければならないだろう。私は学生の頃、試験の前に予習しなかったことを思い出した。
頭をかきながら、カレーライスを食べさせるスタンドの方に歩く。
旅に出た際、駅の中にあるスタンドで軽い食事をする。
昼休みだと、そこに常連が来ている。彼らは作業服のまま、中に居るややきついパーマをかけた女性と話していたりする。彼女は前は何をしていたのか。
すこしこちらは居心地が悪い。
その土地の言葉や流儀のようなものは、すこしだけ冷たくされることで滲むようなところもある。観光ではなく。
常連が去ると、スタンドには誰もいない。
■ 街道を過ぎ、私は吉野山の中腹、吉野神社に小型車を登らせていった。
吉野神社は、明治天皇が後醍醐天皇を偲んで創建したものだという。
ここで数枚を撮ったが、作品としては使わなかった。若いカップルが、薄く煙る山の方角を眺めていた。
細い道を昇ってゆくと、左右に視界が開ける箇所がある。
葛城、金剛の山並みかとも思うが、靄のようなものがかかり、はっきりとは見えないでいる。
2002_10_28
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