青く霧 2.
■ 結局、音楽用のUSBケーブルを買った。
とりあえずという、普及型のものである。
どの程度音が違うのかといえば、多少幅が広くなったような気がする。高い音に角があって、もしかして失敗したかとも思ったが、電流を流して一晩放っておいたら気にならない程度には収まった。
エイジングとかいう世界のお話である。
「緑色の坂の道」vol.7033
青く霧。
■ 年末の銀座辺りで夜の中頃、ジャガーのオープンと並んだ。
Rの付いてない素のもので、色はグリーンだっただろう、洗ってやれば。
男が二人乗っていて、幌は年式相応に痛んでいた。
仕上げるのにかなりかかるだろうな、と思いながら、そのまま潰してしまうのも良いのかも知れないとも考えた。他人のものではあるけれども。
最近、峠を走るということが全くなくなって、その日も人の使いというか送迎のようなものでこんなところへ来ている。
地下駐車場に洗車するところがあるから、昭和のコンクリのヒビ割れを確かめても良さそうだが、履いているのが珍しくウールのパンツである。これで腰を屈めたくはない。
「緑色の坂の道」vol.7032
ほどほど 2.
■ 水を差すのはたいていは妙齢である。
または、現実にそれに似た姿を眺めた時かもしれない。
ヘルメットを被ってタイツのようなものに身を包み、40を超える速度で車道を懸命に走っているレーサーごっこの30代や40代の彼を見かけると、場違いだなと思う。
信号を無視したり、こちらを威嚇するかのような道路上の四民平等の示唆というのも、普段相当ストレスがあるからだろうと、かなり好意的に解釈をしなければならない。
あっさりと、風景に溶け込むかのように、しかもそこに居ることはできないものか。
「緑色の坂の道」vol.7031
ほどほど。
■ あるとき、自転車について書かれたサイトを読んでいた。
非常に参考になる黄昏具合で、適度な価格の質の高い部品を組み合わせ、改造し、遠出や散歩などをされている。
写真も文章も上手く、読み込んでいくと元は雑誌の編集さんであったらしい。
もしかするとあの雑誌かなと、いささかマニア受けする乗り物関係のそれを思い浮かべていた。
「緑色の坂の道」vol.7030
郷愁の。
■ 郷愁のショールしかとかきあわせ(万太郎)
花柳小説ということになると、万太郎のことが思い出される。
緑坂には何度か書いているが「三の酉」という短編は、やはり名作だった。
お時間のあるかたは、検索欄に「蛸と芝居は血を荒らす」と入れてみてください。
花街といえば半ば煌びやかな世界のようにも思えるのだけれども、実際は湿ったどぶ板だったり、月のものが酸化した布団だったりもする。
「緑色の坂の道」vol.7029
侘助。
■ 温い風呂の中で、荷風の「あぢさゐ」を読み返していた。
何本も線が引いてあり、これはいつ買ったものか。
私は荷風の良い読者ではないのだが、この短編は何度読んでも上手いと唸らせるものがある。
古い知人に荷風の研究をしていたという奴がいて、教師になったと聞いているがその後はどうしているか。色のついた厄介とは無縁そうに見えていたが、そんなことは分からない。
「緑色の坂の道」vol.7028
12月の花束。
■ 溜まったCDを整理してHDDに入れた。
いわゆるネットワーク・オーディオと呼ばれるものである。すぐに使い道のない、やや古いノートPCに外付けのHDDをかまし、USB-DACから取り出して旧いプリメイン・アンプに繋いで流している。アンプはかれこれ30年ものだろうか。
HDDは複数作った。ここ数年使っているモバイルWSにも同じソフトを入れて出先で聴くという目論見である。それ用に小型のDACも使うのだが、もちろん音は変わる。
「緑色の坂の道」vol.7027
ぐずらぐずら。
■ 厄介な仕事がひとまず終わった。
資料でA4を1000枚ほどは使っただろうか。残ったものをシュレッダーにかけていたら、半透明の大きなもので二袋程になる。
半ばうんざりしながら、原本を念のためにPDF化しておくことにした。
こういうのは誰かに手伝ってもらう訳にもいかない。
「緑色の坂の道」vol.7026
Dingo.
■ 力の抜けたようなトランペットが薄っすらとはじまる。
短いイントロを聴いただけで、これはマイルスだと分かるのだが、人気のないPAの灰皿のある辺りに車を停め、自分の車なりバイクを眺めるとする。
誰だかが、斜め後ろからみて、いいなと思えれば付き合いが長くなると何処かに書いていた。そうだろうなと私も思う。
「緑色の坂の道」vol.7025
ぬるいギネス 2.
■ 隠れ家のような酒場という言い方があるが、本当に隠れ家ならばそこは成り立たない。
暗がりで加熱式タバコの青く光るLEDを眺めているのも今風だけれども、まぁそんなものかなという気はして、私はあまり冷えていないギネスが好きである。
流通によって微妙に濃さが違うような気もするのだが、煮詰める訳にもいかず黙って嘗めていた。
「どくろ杯」の途中からを数頁めくってみる。