郷愁の。
 
 
 
■ 郷愁のショールしかとかきあわせ(万太郎)
 
 花柳小説ということになると、万太郎のことが思い出される。
 緑坂には何度か書いているが「三の酉」という短編は、やはり名作だった。
 お時間のあるかたは、検索欄に「蛸と芝居は血を荒らす」と入れてみてください。
 花街といえば半ば煌びやかな世界のようにも思えるのだけれども、実際は湿ったどぶ板だったり、月のものが酸化した布団だったりもする。
 

 
■ スタンドの店員は見知った顔がほとんど出ていた。
 不愛想な彼と口のうまい彼。そしてがっしりした彼女である。
 エアバルブを閉め忘れ、ひとつ飛ばしたもするのだが、ディーラーでも稀にそういうことはあるので半分はやむを得ない。それより、寒いのに水に触れる仕事だということが気になってぼそぼそしていた。セルフでガスを入れたり窓を拭いてみると、その手間が分かるのである。
 綺麗にしてますね。うん、夏に天井が落ちてね。旧いジャガーのお客さんもそう言ってました。部品が最後の一個だったんだよ、高くて泣けた。ここまで来たら、後は乗るしかないじゃないですか。
 そういうものかな、とオイルのディップを確認している。
 MAXのちょっと下、確実に下がるまで少し時間を置かないとつい多めに入れ過ぎてしまう。