侘助。
■ 温い風呂の中で、荷風の「あぢさゐ」を読み返していた。
何本も線が引いてあり、これはいつ買ったものか。
私は荷風の良い読者ではないのだが、この短編は何度読んでも上手いと唸らせるものがある。
古い知人に荷風の研究をしていたという奴がいて、教師になったと聞いているがその後はどうしているか。色のついた厄介とは無縁そうに見えていたが、そんなことは分からない。
■ 午後、旧い車を引っ張り出しガソリンを入れてもらう。
スタンドというのは近場の人たちの集まるところだから、場所や店によって微妙に気配が違っている。新しめの欧州車が何台も並んでいて、洗車を待っている。
私も中の掃除を頼んで、それから暫く歩き、コンビニの中にある喫煙室でタバコを吸っていた。
中国名の店員からコーヒーを買い、ポイントで払っていいだろうかと尋ね、ヤニで黄ばんだガラスの中に入ってそれを啜っていた。監視カメラまで黄色く汚れている。
わざわざ隔離されに来ているのだが、年の瀬はそんなものかもしれない。
■ ビルを掃除している年配の男性がいる。
植え込みに椿のような枝が植えられていて、やや葉が細い。
侘助かといぶかんだが、まだ花は付いていなかった。