青く霧。
 
 
 
■ 年末の銀座辺りで夜の中頃、ジャガーのオープンと並んだ。
 Rの付いてない素のもので、色はグリーンだっただろう、洗ってやれば。
 男が二人乗っていて、幌は年式相応に痛んでいた。
 仕上げるのにかなりかかるだろうな、と思いながら、そのまま潰してしまうのも良いのかも知れないとも考えた。他人のものではあるけれども。
 最近、峠を走るということが全くなくなって、その日も人の使いというか送迎のようなものでこんなところへ来ている。
 地下駐車場に洗車するところがあるから、昭和のコンクリのヒビ割れを確かめても良さそうだが、履いているのが珍しくウールのパンツである。これで腰を屈めたくはない。
 

 
■ XKの8は交通会館の方へ曲がっていった。
 中で赤い灯が光って、男がタバコを吸っている。
 あの鼻先で峠を下るのは勘弁して欲しいのだけれど、申し訳程度についた後部座席にカメラバックをベルトで縛り、風呂のある海岸線を目指すのは悪くはない。
 結局一枚も撮らないということはままあって、例えばフィルムの期限が切れる訳である。