厄介だった夏。
■ 旧い車が入庫しているあいだ、ちょこまかと差し入れをした。
担当者だけではなく顔も知らない整備の方、膝を曲げて歩く踵の高い靴を履いた妙齢だったりした。
保険で車を借りたり、それ以外で都合つけてもらったり、パーツの手渡しなども何度かあった。
ディーラーでの整備は、純正部品以外は厳しいところがあるのだけれども、そのパーツがないものだからドウシタラヨカロ。
結局ラジエターは国産のものを付けたのではなかったか。
手間のかかることをやってもらっていて、誠に申し訳ないという気分は常にある。
「緑色の坂の道」vol.7074
黄色の木枯。
■ やらなければならないことがいくつもあって、それを並行している。
結局文章を書くことになって疲れるものだが、それも致し方ないものだろう。
マスクをしているから髭があろうがなかろうが関係はないのだけれども、二日経つとやはり伸びてしまう。
髭の手入れのあと洗面台を掃除するのが厄介で、流したパイプの掃除もしたりした。
「緑色の坂の道」vol.7073
7度の月。
■ 冬である。年も明けている。
書くこともいくつかあるのだろうが、私生活や昼間の厄介(仕事ね)のことも省いていくと指折り残らない。順当に老けていくだけのことである。
一昨年はイエローのバラクータを洗濯したままにしておいたが、去年の12月くらいから袖を通してくしゃくしゃにしてある。
真冬はそれ一枚では寒いので、もう一枚薄く短いものを着るのだが、つまりはブルゾンの二枚重ねということになる。それが正しいのかは分からない。多分間違っていると思っている。
「緑色の坂の道」vol.7072
We shall fight on the beaches.
■ 緑坂を何度か書いたものの没にしていた。
世の中がなんとも言えないからである。
落ち着いて文章を書くよりも、例えば他にすることがあるという。
マスクの下の髭の長さを揃えたり、B級映画を眺めたり、予定変更の打ち合わせを電話やメールで繰り返したり、つまり雑事が増えたのである。
エタノールは純水で薄めよう。
「緑色の坂の道」vol.7071
You're My Everything.
■ 後部座席にライカのデジカメが置いてある。
おまけで貰ったようなカメラ・バックにウェスで包んで入れ、レンズ・キャップは置いてきてあった。転がして捜しにいくのが恥ずかしいからである。
ライカと言ってもコンシューマー向けのそれだから、ほとんど見栄の世界に近いのだが、なかなかこれといった写りにならない。簡単に言えば癖の強い描写をするのである。
取り出して触り、一二枚を撮っては片付ける。これならM6に銀塩のモノクロを入れてきた方が良かったと薄く後悔するのが常だった。
ここから、昨今の写真について語ろうと思ったが億劫なのでやめにする。
「緑色の坂の道」vol.7070
Blue Haze.
■ 軽く。
というキャッチの緑坂を書いてその後が続かなかった。
キャッチと呼ぶべきかどうか、まあなあ、といった按配なのだが、このところこの言葉が私の近場を漂っていた。
何を捨てるか拾うのか。そう単純なものではないのだけれど、「おまえそれ、死生観の問題だろ」と、何年も会っていないあいつなら確実に言うのだろう。
「緑色の坂の道」vol.7069
Woody'n You.
■ 恋も二度目なら、と突然曲が変わった。
スロープには誰もいなかったが、カメラがこちらを見ているので少し恥ずかしかった。音を下げ、シャッターが上がっていくのを待っている。
去年あまり車に乗れず、半年とされる推奨交換時期を過ぎたが夏のオイルのままである。上は50w. 暖まるのに時間がかかり、足回りもその辺りのギアも廻ることを忘れているかのように重くて鈍い。
「緑色の坂の道」vol.7068
オール・ザ・シングス・ユゥ・アー。
■ 冬枯れである。
数時間、車を意味なく走らせようと思うと予報は大雨で、仕方なく自転車のヘルメットを磨いていた。クリーナーを付けて軽くなぞっていると、昔単車の時に被っていたBELLのジェット・ヘルを思い出す。色は白だったのだが、紫外線で次第に黄ばんできてしまい、その頃にはとうに耐用年数を過ぎていた。
単車乗りは基本孤独である。
音楽もなく、同乗者との会話も厳しく、スロットルに合わせたエンジンと排気音だけが慰めで、しかも冬は膝が凍える。
そこで何をみていたのか、今となっては思い出せないが、そうたいしたものでもない。
「緑色の坂の道」vol.7067
河童の髭 2.
■ 髭の手入れは結構たいへんである。
一方で、あちらこちらに不義理をしたままだなという思いが頭を過っている。
散らばった髭を集め、流し、剃刀を取り出して数本を捜して切る。まだどの辺りに残っているものか、鏡で見なければ分からないのである。
ナルシズムかな。かもしれず。
自分の顔は好きなときと嫌いなときがあって、そうは言ってもこればかりは仕方のない話で、順当に老けていければいいのだと思ってもいる。
「緑色の坂の道」vol.7066
薄い雪の日。
■ 人を送った帰りにコンビニに寄る。
愛想のいい外国人店員にありがとうを告げて外に出ると、バックフォグを付けた旧いミニが空いた国道を都心部へ向かっていった。
BMWに変わる前、レイランド製のそれ。確かグレーである。
外気温は2度くらい、さっきまで雪のようなものがチラついていた。
これでイエローのフォグが一灯か二灯、前に点いていたらいいんだけどな。
そう思いながら私は自分の車に乗った。