「緑色の坂の道」vol.7066

 
    薄い雪の日。
 
 
 
■ 人を送った帰りにコンビニに寄る。
 愛想のいい外国人店員にありがとうを告げて外に出ると、バックフォグを付けた旧いミニが空いた国道を都心部へ向かっていった。
 BMWに変わる前、レイランド製のそれ。確かグレーである。
 外気温は2度くらい、さっきまで雪のようなものがチラついていた。
 これでイエローのフォグが一灯か二灯、前に点いていたらいいんだけどな。
 そう思いながら私は自分の車に乗った。
 

「緑色の坂の道」vol.7065

 
    河童の髭。
 
 
 
■ なんのせいか、髭を伸ばしていた。
 一応手入れする道具も買ってみたりしてとりあえずその気である。
 そうはいっても、元々そう濃い方ではないので、鼻の下と顎の周辺にボソボソと無精髭が残っている状態の延長という按配で、しかも顎の方には白いものが大分混じっている。
 評判がいいのか悪いのか、お世辞や社交辞令もあるので結構なんともいえない。
 

「緑色の坂の道」vol.7064

 
    Minor Swing.
 
 
 
■ 音の漏れにくいヘッドホンをという要請があって、SHUREの440を入れた。
 短期間ということと、PCからUSBで出すのであまり大がかりにしたくなかったのである。
 モニター用ということで素直な音が鳴る。低音が足りない場合はイコライザーをかけてやる。思いの他かさばることと耳のパッドがやや安価かなという感じだが、前者はいたしかたなく、後者は何時間も掛けっぱなしにする訳にもいかないので、いずれパーツ交換すればいいんじゃないかなと思っている。
 

「緑色の坂の道」vol.7062

 
    夢も見ない深い眠り 2.
 
 
 
■ ピート・ハミルの短編を読み返している。
 80年代に随分読まれたというその文庫版で、アーウィン・ショーの甘さに飽きた後、ヘミング・ウェイの孫娘のことを思い出した辺りでぽつぽつと拾い読みしていると案外に面白い。
 テーマはほぼ退役した軍人、それも将校ではないGI達のお話である。
 その周辺にいる女達のその後も、同じ酒場を軸にして広がっていく。
 朝鮮戦争の頃の横須賀。その頃二十歳だった彼らがブルックリンに戻り、馴染めるところとそうでないところの境目で、背中のジッパーを上げてやろうとしていた。
 

「緑色の坂の道」vol.7061

 
    夢も見ない深い眠り。
 
 
 
■ 外苑西通りの銀杏の色が鮮やかだった。
 歩いても車でも、葉が落ちる時は微かな音がする。
 後悔は色々あるが、たいていは考えても無駄なことで、時間が経てばどうでもよくなる。ひとつ挙げろと言われれば、もう少し若い頃に無理をしてもモトグッチあたりの単車を買っておけば良かったということくらいだ。
 

「緑色の坂の道」vol.7060

 
    12月の花束。
 
 
 
■ 薄い雨の日、軽く磨いてもらったばかりの車で走った。
 ばかり、と言ってももう二週間は過ぎている。
 硬いオイルは暖まらず、デフの辺りも少しばかりいやいやをしている。
 夏の頃、エンジンのパッキンを替えてやったので今は滲む程度。これ以上を求めるなら下までバラさないとならない。
 それにしても煩い車だな、いちいち吠えなくてもいいじゃないか。
 と、思いながら、少し痺れる足で重いアクセルペダルを踏みすぎないよう、爪先に注意を向けようと心掛けていた。
 

「緑色の坂の道」vol.7059

 
    木枯しまえ 2.
 
 
 
■ 吾亦紅は二度買った。
 アトリエというか仕事場の棚の上に活けておくと、枯れた虫のような形と色になる。
 多分乾いてしまったのだろう。
 何台か動いているWSというかタワー型PCの排熱はそこそこあって、夏場だと小型のサーキュレータを併用しなければならない。時々ブロアで吹く。
 

「緑色の坂の道」vol.7058

 
    木枯しまえ。
 
 
 
■ 西の空が一度に曇って風が出てきた。
 私は矩形のスペースに横になって窓の外をみていた。
 冬が近いのだろう。
 思うことはいくつもあるが、緑坂に書くまでもなく、雑事と昼間の厄介に追われるのが常である。
 

「緑色の坂の道」vol.7057

 
    吾亦紅。
 
 
 
■ 野の花が好きである。
 しかし単体で眺めるのがよくて、実際に山や野を歩くということはほとんどしない。
 短く切ったものを小さな花瓶に入れ、デスクの上に置いておいた。
 台風が近づくという夕刻、庭から虫の音がきこえている。
 

「緑色の坂の道」vol.7056

 
    夜螳螂。
 
 
 
■ 満月の頃、地下に降りていくと車の屋根に動くものがある。
 バッタかなといぶかんだが、こちらを向いた頭と斧が蟷螂である。
 私は小型車のエンジンをかけ、屋根の上に乗せたままスロープを昇った。