薄い雪の日。
 
 
 
■ 人を送った帰りにコンビニに寄る。
 愛想のいい外国人店員にありがとうを告げて外に出ると、バックフォグを付けた旧いミニが空いた国道を都心部へ向かっていった。
 BMWに変わる前、レイランド製のそれ。確かグレーである。
 外気温は2度くらい、さっきまで雪のようなものがチラついていた。
 これでイエローのフォグが一灯か二灯、前に点いていたらいいんだけどな。
 そう思いながら私は自分の車に乗った。
 

 
■ 旧い車には物語がある。と書けばいかにもで、仕事の文なら即没にするものだが、なんとはなしにその後ろ姿が好きだ。サーブだったりメルセデスだったり、時には幌の半分ちぎれたトライアンフだったこともある。
 レストア途中のEタイプが前を走っていて、つい追いかけてしまったことがあったが、最近は価格が暴騰しすぎて隣にサングラスの妙齢本格派がくっついていることが多い。
 シガレット・ホルダー振り回さなくたっていいです。
 
 
■ 雨の964とか、やや疲れた963。多分男が一人で走っているんだろう意味もなく、とその後ろ姿を見送る。
 背後には男女の厄介や家族とのお話もあるのだろう。磨かれた車体が雨に汚れるのも惜しまず、黒いアスファルトと反射する水たまりの上を、暖まらないタイヤのまま加速したり曲がったりしていく。