河童の髭 2.
 
 
 
■ 髭の手入れは結構たいへんである。
 一方で、あちらこちらに不義理をしたままだなという思いが頭を過っている。
 散らばった髭を集め、流し、剃刀を取り出して数本を捜して切る。まだどの辺りに残っているものか、鏡で見なければ分からないのである。
 ナルシズムかな。かもしれず。
 自分の顔は好きなときと嫌いなときがあって、そうは言ってもこればかりは仕方のない話で、順当に老けていければいいのだと思ってもいる。
 

 
■ 私の場合、髭はある種の老い支度、その試行錯誤なのだろう。
 服の好みも髪型も、ほぼ確立されてしまったものだから、後は白髪交じりの薄い髭でも生やし、変化をつけてみたつもりになっているという按配か。
 若い時から比べ数センチは低くなった背丈。29から30のウエスト。ゆるやかに肥大していく前立腺とともに、もうしばらくはこれで凌いでいくことになる。
 ギネスの温い奴を嘗めた後、ナプキンで口の周りを拭いてやらないといけなくなった。
 泡は苦手だ。