オール・ザ・シングス・ユゥ・アー。
 
 
 
■ 冬枯れである。
 数時間、車を意味なく走らせようと思うと予報は大雨で、仕方なく自転車のヘルメットを磨いていた。クリーナーを付けて軽くなぞっていると、昔単車の時に被っていたBELLのジェット・ヘルを思い出す。色は白だったのだが、紫外線で次第に黄ばんできてしまい、その頃にはとうに耐用年数を過ぎていた。
 単車乗りは基本孤独である。
 音楽もなく、同乗者との会話も厳しく、スロットルに合わせたエンジンと排気音だけが慰めで、しかも冬は膝が凍える。
 そこで何をみていたのか、今となっては思い出せないが、そうたいしたものでもない。 

 
■ 歳を取ったら小型の車がいいという知人は多い。
 近くにとんでもなく程度のいいW124の500Eがあって、もちろん前期型だが、いいなとは思うのだけれども、私には荷が重すぎる。程度を維持していこうとするだけでへろへろになるか、水平移動する滑らかな金庫に一生を賭けるみたいなつもりでないとまともには走らせられないことが、私の場合はほぼ確実だからである。
 500Eを検討したことはないが、かつて欲しくなった車は大抵そうだった。
 もうすこし気軽に、適宜な按配で下駄にできる面白いのはないか。そう高くもなく。
 と、相変わらずどうしようもない夢を見ている。