河童の髭。
■ なんのせいか、髭を伸ばしていた。
一応手入れする道具も買ってみたりしてとりあえずその気である。
そうはいっても、元々そう濃い方ではないので、鼻の下と顎の周辺にボソボソと無精髭が残っている状態の延長という按配で、しかも顎の方には白いものが大分混じっている。
評判がいいのか悪いのか、お世辞や社交辞令もあるので結構なんともいえない。
■ 手入れする道具にも色々あるのだが、私は電池式の最も簡便で安価なものにしている。充電式は重いこと。乾電池でも充電できるものを普段使っているものだから、それを入れた箱から取り出して使えばいいこと。
ヘッドホンその他の場合でもそうなのだが、素性が良ければ基本的なもので十分事足りる。足りなければその時考えればいい。
コームというか髭の長さを調節する部品がついていて、数回の錯誤の結果、3ミリというところで今遊んでいる。そうなると無精髭とあまり変わらない。
違うのは、数本の剃り残しなどを綺麗にしてやること、唇の周りを整えてやることで、実を言うとほぼ毎日洗面台に向かって騒ぐことになる。
部分的にハサミを使ったりもするから、手間の面では前よりも余分に時間がかかっているのかも知れない。
■ ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」の中で、ケーリー・グラントがNYグランドセントラル駅のトイレの中で髭を剃る場面があった。
女性ものの小さい剃刀を使っていて、通りがかった他の男から奇異な目を向けられるのだが、その時のごまかすような表情がいい。
これはナンダという按配で小さな剃刀を見る。鼻の下の泡立てたクリームをなぞる。
洗面台の扉を開くと大体は謎なもので、何に使うか分からない様々な小道具がどの家にもあるものだが、年に数回は整理することを薦めたい。