「緑色の坂の道」vol.6948

 
    未亡人のドア飾り。
 
 
 
■ どの部屋にもリースが掛けてあった。
 警備会社のステッカーが小さく貼られているところもある。
 ちょっと空気が澄んでいて、ここはあまり生活感がない。
 

「緑色の坂の道」vol.6945

 
    袋入りの酒について。
 
 
 
■ 紙が膨大に出る。
 シュレッダーをかける場合もあるし、そうでないこともある。
 もう少しいけるだろうと連続していると、シュレッダーから取り出すときに散らばって、のそのそ掃除機を捜しにいくことになるのが常だった。
 人生とはそんなものである。
 

「緑色の坂の道」vol.6944

 
    ブルー・シャドウズ・オン・ザ・トレイル。
 
 
 
■ 感覚のようなものを頼りにして、時々表現と呼ばれるものをする。
 理屈をつけることもできるが、そこから零れ落ちるものの方が多い。
 いつだったか産業道路から大きく曲がって埋立地へゆく橋の上で、手を伸ばせば届くところに電車の人影があった。正確には横顔である。
 電車の照明は白だから、顔色も着ている服も反射して、誰かがこちらの方を見ている。
 

「緑色の坂の道」vol.6943

 
    眠らないで。
 
 
 
■ 輝度を80にして、それでもまだ明るく、モニターのソフトを操作して幾分か下げている。
 小型のキーボードがひとつ。いくつかのPCとリンクさせて切り替えるのだが、いざ使おうとすると接続が切れていて、あまり使いものにはなっていない。
 道具は馴染むまでが厄介で、つい昔のやり方を懐かしむのだが、それでいい場面とそうでもないところとが混在しているものだから、見きわめるタイミングも出てくる。
 

「緑色の坂の道」vol.6942

 
    深い灰色と錆びた赤。
 
 
 
■ 手に一本の薔薇を持って、こんなところを横切る男。
 誰に渡すのだろう。
 相手はどんなひとだろうか。
 それにしても腹が減った。
 

「緑色の坂の道」vol.6941

 
    埋立地の満月。
 
 
 
■ 遠くに海がみえたような気がして、高いところに光っているのは満月に近い。
 白の車体に、白いホイルを履いた6シリーズのクーペと、まばらに駐まっている営業車のあいだを過ぎ、ようやく乗ってきた車をみつける。
 随分と古い駐車場で、そんなことは近づいてみなければ分からないものだ。
 

「緑色の坂の道」vol.6940

 
    十二月の花束。
 
 
 
■ 彼女は煙草を吸っている。
 寒いのに短いスカートを履いて、バックのようなものを抱えている。
 女子プロなのだ、と気づくのに僅かに時間がかかった。
 

「緑色の坂の道」vol.6939

 
    デビルのマフラー。
 
 
 
■ 東京というのは不思議なところで、大抵のものがある。
 旧いワーゲンも走っているし、山のようにそびえるベントレーがスーパーの駐車場にうまく入り込んでいたりもして、係員はなるべくそちらを見ないようにしている。
 先日は懐かしいマトラを見た。
 奥様を降ろして買い物の途中のようで、あれだと真ん中にチャイルドを付けるのだろうか。
 

「緑色の坂の道」vol.6938

 
    春の如く。
 
 
 
■ 駐車場から出ていくとき、指先が冷たかった。
 そろそろ皮の手袋がいるかな。
 そういえばどこに仕舞っただろう。
 そんなことを考えながらシャッターが開くのを待っていた。
 

「緑色の坂の道」vol.6937

 
    枯葉ラム。
 
 
 
■ 退屈なバーがあって、スーパーの傍にある。
 融解した狐のような妙齢が時々いることもあって、私は彼女の膝から下が好きだった。
 何時まで。