「緑色の坂の道」vol.7071

 
    You're My Everything.
 
 
 
■ 後部座席にライカのデジカメが置いてある。
 おまけで貰ったようなカメラ・バックにウェスで包んで入れ、レンズ・キャップは置いてきてあった。転がして捜しにいくのが恥ずかしいからである。
 ライカと言ってもコンシューマー向けのそれだから、ほとんど見栄の世界に近いのだが、なかなかこれといった写りにならない。簡単に言えば癖の強い描写をするのである。
 取り出して触り、一二枚を撮っては片付ける。これならM6に銀塩のモノクロを入れてきた方が良かったと薄く後悔するのが常だった。
 ここから、昨今の写真について語ろうと思ったが億劫なのでやめにする。
 

「緑色の坂の道」vol.7070

 
    Blue Haze.
 
 
 
■ 軽く。
 というキャッチの緑坂を書いてその後が続かなかった。
 キャッチと呼ぶべきかどうか、まあなあ、といった按配なのだが、このところこの言葉が私の近場を漂っていた。
 何を捨てるか拾うのか。そう単純なものではないのだけれど、「おまえそれ、死生観の問題だろ」と、何年も会っていないあいつなら確実に言うのだろう。
 

「緑色の坂の道」vol.7069

 
    Woody'n You.
 
 
 
■ 恋も二度目なら、と突然曲が変わった。
 スロープには誰もいなかったが、カメラがこちらを見ているので少し恥ずかしかった。音を下げ、シャッターが上がっていくのを待っている。
 去年あまり車に乗れず、半年とされる推奨交換時期を過ぎたが夏のオイルのままである。上は50w. 暖まるのに時間がかかり、足回りもその辺りのギアも廻ることを忘れているかのように重くて鈍い。
 

「緑色の坂の道」vol.7068

 
    オール・ザ・シングス・ユゥ・アー。
 
 
 
■ 冬枯れである。
 数時間、車を意味なく走らせようと思うと予報は大雨で、仕方なく自転車のヘルメットを磨いていた。クリーナーを付けて軽くなぞっていると、昔単車の時に被っていたBELLのジェット・ヘルを思い出す。色は白だったのだが、紫外線で次第に黄ばんできてしまい、その頃にはとうに耐用年数を過ぎていた。
 単車乗りは基本孤独である。
 音楽もなく、同乗者との会話も厳しく、スロットルに合わせたエンジンと排気音だけが慰めで、しかも冬は膝が凍える。
 そこで何をみていたのか、今となっては思い出せないが、そうたいしたものでもない。 

「緑色の坂の道」vol.7067

 
    河童の髭 2.
 
 
 
■ 髭の手入れは結構たいへんである。
 一方で、あちらこちらに不義理をしたままだなという思いが頭を過っている。
 散らばった髭を集め、流し、剃刀を取り出して数本を捜して切る。まだどの辺りに残っているものか、鏡で見なければ分からないのである。
 ナルシズムかな。かもしれず。
 自分の顔は好きなときと嫌いなときがあって、そうは言ってもこればかりは仕方のない話で、順当に老けていければいいのだと思ってもいる。
 

「緑色の坂の道」vol.7066

 
    薄い雪の日。
 
 
 
■ 人を送った帰りにコンビニに寄る。
 愛想のいい外国人店員にありがとうを告げて外に出ると、バックフォグを付けた旧いミニが空いた国道を都心部へ向かっていった。
 BMWに変わる前、レイランド製のそれ。確かグレーである。
 外気温は2度くらい、さっきまで雪のようなものがチラついていた。
 これでイエローのフォグが一灯か二灯、前に点いていたらいいんだけどな。
 そう思いながら私は自分の車に乗った。