夢も見ない深い眠り 2.
 
 
 
■ ピート・ハミルの短編を読み返している。
 80年代に随分読まれたというその文庫版で、アーウィン・ショーの甘さに飽きた後、ヘミング・ウェイの孫娘のことを思い出した辺りでぽつぽつと拾い読みしていると案外に面白い。
 テーマはほぼ退役した軍人、それも将校ではないGI達のお話である。
 その周辺にいる女達のその後も、同じ酒場を軸にして広がっていく。
 朝鮮戦争の頃の横須賀。その頃二十歳だった彼らがブルックリンに戻り、馴染めるところとそうでないところの境目で、背中のジッパーを上げてやろうとしていた。
 

 
■ 私は、何度か洗って色の褪せたリバース・ウィーブのパーカーに手を突っ込んでいた。この格好ではさすがに虎ノ門のホテルの上にはいけない。上に黒のG4を羽織っても無理だろうか。ラムを水で薄めても旨くはなく、今更誰かを口説いても顛末は退屈である。
 
 
 
■ 浪花節を短いセンテンスにまとめたハミルの短編は半ば男たちに受ける。
 ハルダースタムの「ザ・コールデスト・ウィンター」は長い本だが、厳密に朝鮮戦争の戦史というところを超えたところに味があった。ハミルがどう評したか分からないが、今は橋を渡ってブルックリンに戻ったという。