スペインの石。
■ 気に入ったものを色違いで買うということを時々やる。
化学繊維が混ざるようになってからのバラクータのG4がそうで、そのうちミストと呼ばれる白いものは洗濯屋がしくじって妙に柔らかくなってしまった。
それはそれで、腕まくりしやすいので羽織っている。裏地が派手だから、ある意味で結構あざとい。
■ 少し無理してでも欲しいものを手に入れる。そんな時期は誰にでもあるだろう。
成程と感心し、こんなものかなとも思う。
長く使わなければ分からないこともあるのだが、価格その他に見合うかどうか、どうでもいいのかが見えたような気になることもあった。
少し落ち着いてきただろうタワー型のビルの駐車場に入っていくと、周りは派手な車と営業車である。直立したパルテノンのロールスも、山のようなフォードのトラックも、幌が少し汚れたアストンのオープンなんかもいて、新しいメルセデスの白などは極普通の実用車に見える。それと男のハイエース。
先に入った低くて幅の広いメルセデスを運転していたのは女性だったが、車庫に完全に入れるまで私は暫く待っていた。
彼女は降りた後でこちらに礼を言う。会釈はまれにあるが、言葉にされるのは珍しい。 私も頭を下げるのだが、その女性の羽織っていたカーディガンが遠い国の絵柄だった。