すこし風の日。
 
 
 
■ 坂道に溜まっていた桜の花弁もいつの間にか消えている。
 今年は花が早かった。数日前には雪すら降っている。
 地下へ降りると車の上に黄砂のようなものが積もっていて、また洗車をするのかとうんざりしたものだ。
 

 
■ あれから何度か自転車に乗って、冬の間は一回風邪を引いた。
 真冬の自転車というのは酔狂である。第一防寒の手袋が要る。
 春になって、そろそろいいだろうとカバーを外してみたのだが、少し手入れをしなければならない。軽くワックスをかけ、ポリッシュでアルミの部分を磨いてみた。
 近くまで坂道を下り、いきつけの店で空気を入れてもらう。不愛想でそのくせ子ども好きの若い店員さんがいて、そっすね、が口癖である。
 久しぶりっすね。そっすね。
 
 
 
■ ママあのおじさんの自転車、後ろがピカピカ光ってるよ。
 小学校低学年の男の子が指さす。おお。光るのは昼間でもスイッチを入れている点滅式のライトである。遠くからでもみえるんだ。
 ぼくも欲しいよ。
 私は保護者のお母さんに軽く会釈をして、不審な者ではありませんと示唆する。
 港区は禁煙だ。