灰桜。
 
 
 
■ 芝居を見にいこうとしていた。
 お世話になった方もいたので、銀座に出た際に適当なものを買い、熨斗をつけてもらっていた。楽屋までいかず、帰り際に置いて、そそくさと戻ろうと思っていたからである。
 古参の店員さんがその場合にはこう書くと教えてくれて、そうしたものかと勉強になった。
 

 
■ 春先というのは所用が重なる。
 電話が鳴り、対応し、調べ、指示というかお願いを出し、書類を書いたりメールしたりした。返事待ちが暫く。
 そうこうしていると雨が降って急に寒くなり、髪の毛が伸びて足を怪我した。
 こころは底の方で急ぐ。頭痛も薄い。
 
 
 
■ 芝居見物というのは、名実ともに余裕のある時でないとできないものだな。
 私は久保田万太郎の「あきくさばなし」、その半分だけは読んでいた。
 この方がこの役なのだろうという、薄っすらとした予測もあった。
 それからどうしたかというと、やや漠然として、封を開けたものを摘まんでいる。