凍鶴 2.
■ 奈良市中、縦の格子戸の写真を作品化している。
それに「凍鶴」という題をつけた。
■ 山口瞳さんに「私本歳時記」という短編集がある。時折読み返していて、文庫の表紙はぼろぼろになってしまっていた。
短編小説のお手本、とまでは言えないが、ある時代のある地域の方々にとっては痛いほど伝わる細部の描写と省略の技が冴えている。
男女間の睦言、そうしたものが背後にあって、そこに大きなまたは中程度の会社に勤めている男たちのもろもろの人生が重なる。
その世界に完全に埋没していれば描写できない。
片足を突っ込んでおけばいいのだが、その足がともすればぶらぶらと揺れる。
■ 作品では色味に拘った。
フィルムからのスキャニングはソフトの設定を変えて10数種。これはと思うものを一日モニターに表示しておいて漠然と眺める。それを何度か。
確か東京に雪が降った頃である。
誰と会い、何を話し、どんな靴下を履いていたかは忘れてしまったけれども、これは凍鶴だなと思っていたことは覚えている。