坂道と朝の男。
 
 
 
■ 明け方近く、男が歩いていく。
 右手にペットボトルの水を持ち、やや不穏な表情でのたのたと昇っていく。
 明け方のランニングかウォーキングなのだと気づくまでに数秒かかった。
 

 
■ 上半身が半分裸のような妙齢本格派が走っている。
 色は黒く脚は硬く、ただ顔つきが若くはない。
 一キロも全力で走れと言われれば、三歩で一服したくなる私とは別の世界の住人だろうか。別にいいんだけど。
 
 
 
■ 都会にしか棲息しない顔つきというのがあるもので、健康そうにみえてわたしはなにかに脅えている。