濾過の手前。
■ 戦記ものを何冊か捲っていた。
夏のこの時期だからかも知れない。
膨大な数出ているはずで、今簡単に手に入るものといえば限られてはくる。
■ 次第に、生き延びた人間の鬱陶しさのようなものが鼻につくようになって、どうしてこの人が戦後代議士になったりしたのか、分かるような気がした。
操縦桿を握りながら作戦計画を思いつき、機上で「敦盛」を吟じていたという件では、さすがにうんざりして途中で本を置いた。
若い頃、安吾の「信長」を読み耽っていたことがあったからである。
■ 多分、人間のタイプなのだと思う。
一斉に皆が雪崩をうってひとつの方向を向くとき、独りだけそこに留まることは難しいし怖い。
足許もそうだが、背中のあたりに産毛が生えていて、それが一斉に揺れるような錯覚に陥るのである。