不感帯。
■「プロバガンダ映画のたどった道」(角川文庫:NHK取材班編:1995)という本があって、書棚を捜したが出てこなかった。何かの弾みで処分してしまったのかも知れない。
映像向けの取材ノートを纏めたものらしく、一般的な記載に留まっているところもあり、やや物足りなさは残るのだが、いわゆる我が国「国策映画」のひとつの象徴ともいうべき「新しき土」についての記載があったことを覚えている。
1937年公開。熱心なナチ信者、アーノルド・ファンクと伊丹万作監督の合作。
16歳の原節子さんが登場する作品である。
■ 原節子さんについて言えば、熱心なファンも多いので自粛すべきなのだろうが、個人的には実に美人だと思ったことがない。
各部の造作が大きすぎ、もし卓袱台の前に座られていたら、ご飯のお代わりがしにくいような気がするのだ。
写真家のどなたかも似たようなことを言われていて、酷いことをと思ったが、私も同じである。
原さんは、戦中戦後そして引退と、その人生が物語もしくは伝説のようにも語られてきていた。
が、ある種ズドンとした不感帯を省かれたところに感じてしまうのである。
それは原さん個人の資質というよりも、時代が共有し必要としていた曖昧さ、もしくは鈍感さの投影と言うべきだろうか。