外苑の西。
 
 
 
■ 確かバブルの頃、洋服ではなく乗っている車でその男の性格が分かる、と書いた小説家がいた。
 あの当時であればそうだったかもしれない。
 今だと何だろう。マニアックな自転車か、使っている端末か、持っている予備バッテリーの数あたりだろうか。あるいは短躯にも関わらず幾重にも巻いている男のストールの色と枚数のようなものだろうか。
 どうでもいいのだが、結構ムツカシイんじゃないか、という感じはする。
 

 
■ シングル・モルトとかワインとか。
 葉巻の銘柄やそのパンチやら。
 小道具に凝るようなところが男にはあって、例えばカメラの世界などはその最たるものである。
 年配の方が銀座裏辺りで、おもむろにライカを取り出してなにものかを撮ろうとしている。
 あ、フード落としましたよ。
 お、どうも。
 などという会話を何時だったか交わしたことがあって、その後道を訊かれた。 
 
 
■ いいカメラですね。
 いやぁ。
 その方のものはフィルムを入れる年式のものだった。
 これ、蓋を落としやすいんですよね。
 そうそう。
 交差点まで歩くと、そのまま別れるのである。