真横の月 4.
 
 
 
■ 一月はさわさわと過ぎる。
 先日、新宿へ向かう辺りで後ろ向きになった旧いサーブ900をみかけた。
 お、と思ったのだが、人を送っている途中だったので停まってまでのことはない。
 あれは確か、ドアを開けると地面が真下に見える型の3ドアで、フロントが絶壁になっているものだろうか。
 渋めのいい色だった。塗り替えたのか、驚くべき程度をしている。後ろに付いているウレタンのスポイラーが真っ黒で、そこだけでも保管状態が知れた。
 
 
 
■ いるんだよな、こういう方が。
 と思いながら私は甲州街道へ曲がっていった。
 ここにシビエかマルシャルの丸いフォグかドライビングを付けているのが私の好みである。フォグはやはり黄色だろう。
 極めて現実的に考えれば、この年代の車は、購入よりもその維持にコストがかかる。サーブという車の会社は、ご存知の通りその全盛期を過ぎ、部品の調達などもそう簡単にはいかなくなっている。比較的新しいヴィゲンなどでも10年は過ぎている訳だから、全ての部品がすぐに揃うとは考えにくい。あったとしても高価になってしまう。
 
 
 
■ 芝浦のディーラーが昔のままの頃、入って右に折れるとサーブの窓口があって、その手前に900やら9-3などが何時も数台停まっていた。
 適当にヤレた感じの、ほぼ毎日使っているかのようなそれである。
 サービスマンがボロロとGM4気筒のエンジンをかけ、調子を見ているのか深く踏む。
 マフラーの抜けがいいのだろう。結構乾いた音がしていた。