地平線の話 2.
 
 
 
■ 車か酒か、あとは下品にならない手前の男女の厄介の話というのが、昔から男たちの時間つぶしに使われているという。
 要は酒場でのたあいもないお話ということなのだが、この辺り、なかなかセンスが問われるところもあって、漠然とするのはむつかしい。
 
 
 
■ 退屈な車のお話である。
 いつだったか古い車の雑誌を捲っていたら、サーブの99辺りがテストされていた。
 この車にはなんとなく縁があって、若造だった頃、環八の車屋に実車を眺めにいったことがある。欲しかったのだ。
 20代後半の辺りだったと記憶しているが、その歳でそれを選ぼうとすること自体かなりの偏屈である。背伸びしたい年頃というか、手短に言えばバカである。
 買ったところで、結局は維持できなかっただろう。
 実車はかなり手を入れねばならない状態だった。結局保守的な別のドイツ車にしたのだが、サーブ特有のやや屈折した面持ちというか道具性というのは長く気になっていた。
 今も時折そうである。
 
 
 
■ サーブの99の最高速度は実測で160くらいである。
 当時の国産車と比べると、2リッターの18RGを搭んだセリカ辺りで175、2.8リッターのS130のZが185少しというところなので、案外俊足と言えた。
 当時、普通のエンジンの2リッター・セダンは実測150ちょい程度なのだった。
 ついでにデータを眺めてみると、2.8リッターのZ、ATの0-100kmが14.41秒とある。
 これは遅い。モッサリもいいところである。
 L型のノーマルだからなぁ、とか言ってみるのだが、赤とかツートンに塗り分けられたZは、人生いかにもなボクが乗っていて、半分は別の世界に見えたことも覚えている。