地平線の話。
 
 
 
■ 低い雲がうずくまっていて、後ろが光っている。
 日没が近いからだが、外気温は凍るまでに至らない。
 あの向こうに並んでいるのが多分民家で、白や橙の灯りが漏れていた。
 そこには暮らしがあると思うのだが、その笑顔がすぐに浮かんでこなかった。
 笑顔と決めることも、ステロタイプなのかもしれない。
 
 
 
■ 東京にいると地平線を見ることがなく、すぐに視界は閉ざされてしまう。
 時々、なにもない平野や海岸線近くをどこかに急ぎたくなることがあって、移動の手段は車か単車である。季節柄と年齢から、単車というのも非現実的な話で、そこで少し旧いサーブのことを思い出した。