L'Armee des ombres.
■ レジスタンスというと、一般にはフランスでのことを思い浮かべる。
ロマンチックに捉えられることも多いのだが、実際はそうでもなく、ほぼ密告と裏切りが日常だった。
「影の軍隊」というリノ・バンチュラ主演の映画があった。1969年、フレンチ・ノアールの傑作である。中にかつての同志、裏切った女を処刑する場面があり、覚えているのは白いコートである。それは誰が着ていたものか。
ひっくり返る黒塗りのシトロエンのトラクシオン・アバン。
■ 占領期にナチと通じていた女たちが、解放後、市民に髪を切られ石や糞尿を投げつけられる。キャパの写真にもそうしたものが残っている。
市民同士のそこまでの憎悪というものは、個人的には想像しにくいところもあって、その理由を考えても最後のところで靄がかかったように曖昧だった。
パルチザンに処刑され逆さに吊るされたムッソリーニやその愛人の写真を見た方も多いだろう。そうした光景はこの国にはなかった。
特高や憲兵の存在は知っていても、数100万人からの人間を処置した強制収容所が身近に存在しなかったからかもしれない。
幸か不幸か、いかにも島の国である。
同時に、亡命ということも現実的ではなかったのである。