踏み絵。
 
 
 
■「松明のごと、なれの身より火花の飛び散るとき」
 葉子がベットの上で低い声を出した。
「なれ知らずや、わが身をこがしつつ自由の身となれるを
持てるものは失われるべき定めにあるを」
 
 
 
■ ワイダの「灰とダイアモンド」の一節である。
 拙作「夜の魚」から持ってきた。
 日常的に踏み絵を強いられる国や時代というものがあって、忠誠と裏切りは同じものの裏表である。収容所の中には、囚人の中から選ばれたカポという存在があった。