世間師 2.
■ いたしかたなく。
矩形のスペースに横になって宮本常一さんの「忘れられた日本人」を捲っていた。岩波文庫から出ているもので、手元にあるのは60刷を数えている。
宮本さんの一連の著作は宮本民俗学と呼ばれていた。同書は氏の最高傑作との声が高いが、純度があり過ぎるがゆえ、ともすれば創作との境界が定かではなくなる気配もあった。
「土佐源氏」「女の世間」などは半ばよく出来た短編小説、伝承文学のようである。
西の地方の時間の流れというのは、関東や北とはまた異なっているようだった。
■ 宮本常一さんの「私の日本地図 3 下北半島」(未来社:2011年)などはその写真も素晴らしいものである。
季刊「東北学」だったか、宮本さんが使われていたカメラやフィルムの話が載っていた記憶もあって、枚数を撮るためにハーフ・サイズを使われていたと、どなたかが回想されていた。
同書には、恐山のイタコはそう古くからのものではなく、大正の終わり頃からだという指摘もあり、氏以外の文献でもそうなっている。
■ 殿山泰司さんという俳優がおられた。
新道監督の映画撮影で下北半島にいく。津軽三味線の竹山を主人公にした作品である。デデン。
神奈川でもないのに横浜だって。マギラワらしいよな。
と、殿山さんはその随筆に書かれていたが、あの辺りの浜辺をうろうろされていたのである。寒い。