あずさ弓 4.
 
 
 
■「男はつらいよ」を正月にリアル・タイムで観た方はいるだろうか。
 映画館というか劇場でである。私は残念ながらない。
 時々テレビで流れていたが、それも真面目に眺めたという記憶もない。
 当時の若者もしくはヒネた中年の例に漏れず、どちらかと言えば反発を抱いていたという方が正しく「山田監督は映像官僚だ」などという批判にふむふむと肯いていた。
 難しい単語が入っているとゲージュツだと思っていたところもあり、今にして思えばそれも裏返しの劣等感であることは確かだった。
 
 
 
■ 寅さんが、労働者諸君、という。
 または、芸術という単語を使う。
 最も遠いところにいる存在の寅さんがである。
 観る側はそこで笑うのだが、この笑いにはなかなかしたたかなところも含まれていて、観客は「芸術の先生」の存在そのものを相対化し、笑ってもいる。
 山田監督はそれを承知していて、こういうところが計算高いと言われていた由縁かもしれない。
 
 
 
■ こちら「作家センセ」
「芸術のカタ」学割。
「ジャーナリスト」文化人枠。安い。オピニオン・リーダー。
 その他なんでもいいのだが、どんな商売でも実はたいへんである。