あずさ弓 3.
 
 
 
■ 南国土佐を後にして
 という歌がある。ペギー葉山さんの代表曲のひとつになっているが、中に「都に来てから幾歳(とせ)ぞ」という一節がある。
 これを聞く度にどうも私は、集団就職で東京や大阪など大都会に出てきていた若い彼や彼女のことを想像してしまうのである。
 そういう立場だった訳ではないし、またそのようにされてきた諸先輩方と親しく交際させてもらったことも数えるほどしかないのだけれど。
 
 
 
■ 日活で歌と同名の映画が作られた。
 このヒットが「渡り鳥シリーズ」に繋がっていく。
「渡り鳥シリーズ」はいくつあったのか、会津辺りでロケをしたものの中で歌われた曲が「ダイナマイトが150沌」だったかどうか。
 今ネットで調べればすぐに出てくるようなお話なのだが、それも詰らないような気もする。
 
 
 
■ 確か「男はつらいよ」の比較的初期の作品で、榊原るみさんが東北から出てきた娘役を演じたことがあった。
 映画の冒頭に集団就職の列車が登場し寅さんが、そうか大変だなぁ、がんばれよ少年、とかいう。
 フーテンしている寅さんにがんばれよと言われてもな、というところで笑える。
 マドンナというか娘は結局故郷に戻るのだけれども、それが津軽平野の西。
 海沿いの道をボンネット型のバスが走ったり木造の小学校があったりした。
 私はその土地に行ったことはないのだが、例えば五所川原辺りから竜飛岬へ向かう国道というか道路の界隈が、映画の中の風景に似ていた。
 海と小さな港と、それから船や道具を入れておく漁師小屋がぽつりぽつりと並んでいたことを思い出す。
 日暮れまでに、と急いだだろうか。
 冬の夕暮れはどんなものか。
 作品は1971年の公開。昭和46年ということだが、今眺めると当時の日本はあたかも別の国のようにもみえていた。