十月の赤い月 6.
 
 
 
■ 当時何をしていたのか。
 車はドイツだったか逆輸入だったか。
 訳ありの銀座の妙齢本格派を迎えにいって、いいかげん洗ったらと言われたものである。
 
 
 
■ 退屈な話だが、洗車代でポジが買えた。
 現像からそれをデジタル化する手間とコストを考えると、一枚がおおむね今の昼飯代である。いわんや36枚トハ。
 
 
 
■ だからどうしたということはない。
 身を切られる思いでシャッターを押し、それがしくじってラボの蛍光灯でがっかりし、受付の化粧のかなり濃い彼女の笑顔にうらぶれた気分を想起させられながら、よるべなき夜をモニターに向かっていたのである。