十月の赤い月 5.
 
 
 
■ 低いところに月があって、その下に炎がみえる。
 コンビナートなのだ。
 まだフィルムだった時代、埠頭の奥へ入り込み、FDのレンズでそれだけを何本か撮った覚えがある。
 今なら多分、身分証を出さないとならないだろう。
 
 
 
■ 当時、魚眼に近い監視カメラはそれ程普及してはいなかった。
 せいぜいが入り口にそれと分かるものが置いてあったばかりである。
 眠そうな顔の警備員に近寄って、あそこの石炭を撮りたいんだけどと言うと、あんただれ、とは尋ねずに、仕事かいと彼は言った。