コタツ龍之介 6.
 
 
 
■ この辺りの事情というのは例えば写真や図案、広告の世界と似通ったところがある。
「FRONT」という国策雑誌があったが、ここに集まった面子の何人かは戦後各分野での旗手に一転している。
 体制は変わってもスターはスターのまま、というところが後に非難を浴びたところもあるが、彼または彼女の存在意義はその思想にあるのではなく、それを表現する技法やセンス、格好をつけて言えばその美学にあるのだという切り返しも可能だった。
 
 
 
■ 第一、協力するなりそのフリをしなければ紙もフィルムも配給されなかったのである。生活、更には徴兵ということもある。
 何人の映画監督や作家、または画家・ジャーナリストなどが徴兵または懲罰徴兵され、前線に送られそのまま戻ってこなかったか。
 国民皆兵が建前であるから、職業に区別はないものだけれども。
 例えば歌舞伎の名女形が、国民服を着て勤労動員させられていた時代だったと書けば芝居好きの方には理解されるだろうか。
 しかしあまりにオクターブ高く、スローガンを唱え、その時々の時局に便乗しているのを識ることになるもの、個人的には興ざめだった。