枯れ方について。
 
 
 
■ カメラとの付き合い方というのは、車やPC、または腕時計なんかと似ているような気がする。
 あるいは酒でもいい。
 
 
 
■ メルセデスがポルシェと共同開発した500Eという車があって、これは掛け値なしの名車である。自ら所有したことはないが、何度か訳ありで乗った。のべ1000-2000キロくらいだったろうか。
 ゲルマン民族の特性が上から下まで滲んでいるティーガー重戦車のような車だった記憶がある。パンターではない、ト。
 ティーガーと多分違うところはあくまでフラットに加速減速するところで、鉄の金庫が走っているみたいな気もした。
 大体ポルシェ博士というかその系譜は、概念や設計の無理を技術でどうにかしていこうとする傾向があって、第二次大戦当時のマウスやエレファントなんかはその至らなかった方面での代表である。
 その無理というか、ある意味でグロテスクにも映るところを、無理矢理ボンネットに押し込めているところが奇妙に男心をくすぐるのである。
 古くはスカイラインのGT-Bみたいなものだろうか。すこし次元が違う。
 
 
 
■ 改装なる前の芝浦のディーラーでのお話である。
 ガンメタの初期型500Eから降り立ったのは、見た目40代の妙齢本格派である。若く見えるということで、実際はもう少し大人だったのだろう。首の辺りには軽くスカーフなどが巻かれていた。
 簡単な整備なのか。少し打ち合わせをしてサーバーから水を汲み、彼女はガラスの外にでて煙草を一本吸っている。
 化粧は薄くかつて女優だったと言われても納得はするのだが、媚のようなものはない。