女と文士。
■ 大村彦次郎さんの「文士の生き方」という本は、例えば立石から狛江にいく途中で読める分量である。相模原でも良い。
新書であるから、いくつかの評伝や全書からかいつまんで云う、という側面があることは否めないのだが、さすがに元名編集者だけあってポイントの掴み方は的確である。
■ ちょっと目次から拾ってみる。
芥川龍之介
葛西善三
喜村磯多
直木三十五
徳田秋聲
近松秋江
葉山嘉樹
宇野浩二
久保田万太郎
谷崎潤一郎
高見 順
山本周五郎
和田芳恵
妻子を捨て愛人と駆落ちし、30歳も年下の多情な女に翻弄され、逃げた女の執拗な探索に身をけずり、自分の創作のためには身近なすべてを犠牲にしてはばからない‥‥そして彼らは数々の名作を生み出した。
(前掲:扉より)
■ 新書の扉にある概要というかなんというかは、端的である。
いわゆる戦後無頼派と呼ばれた方々がここに入っていないところが味噌かもしれない。
芥川や谷崎は別として、読者諸兄は何人知っているだろうか。
金と女で苦労しないと一人前にはなれないよ、と言われていた時代の作家なのだが、苦労しても一人前にはなれなったりもする訳で、世は酷である。
一人前の定義というのも流れだが。