手袋のはなし。
 
 
 
■ 先日手袋を買った。
 自分で買うのは久しぶりで、紳士用品売り場でひっかかったのである。
 背広姿の男たちが、やや真剣な面持ちで手を突っ込んでいる。
 その姿が、あ、私も、と思わせたのか、いわゆる丸の内界隈の風情だった。
 
 
 
■ 本当は車を運転する時のものが欲しいのだが、指先の出ているものでいいものが少ない。
 昔使っていたベージュのそれは、ナルディのウッドの時に重宝して、終いに親指の下あたりが薄くなって擦り切れた覚えがある。
 靴下に穴が開いているのを発見したとき思わず、あ、と口に出るみたいな按配である。
 その時の驚きと哀れさ。
 どうもこの緑坂は、あ、が多い