水色のワルツ 2.
 
 
 
■ 男と別れる前の女は例外なく奇麗になる。
 張り詰めた想いが内側から滲んでくるのだという。
 そうだろうか。次の男のための準備かも知れない。 
 
 
 
■ 黒い海を船が横切ってゆく。
 オレンジ色の細かな電球がゆっくりと動いている。
 横浜から戻る車の中で、晃子がラジオを消してくれと言った。
 窓を閉め、カマロは流れに沿ってゆっくりと走っていた。
 シートにもたれ、晃子が古い歌を小さな声で歌っていた。
 晃子の声は低い。
 なんて歌なんだ、と尋ねると、水色のワルツっていうのよ、と答えた。
 私にはブルースのように思えた。 
 
 
 
■ その時、遠くでタイアの割れる音がした。
 あたりの空気が収縮し、密度ある水のようになった。
 脇をみると吉川が横腹を押さえている。
 押さえた掌から赤黒い色が広がっている。
 血だ。
 雨になった