排除型社会。 
 
 
 
■「後期近代における犯罪・雇用・差異」(ジョック・ヤング著:青木秀男 伊藤泰朗 岸正彦 村澤真保呂 訳:洛北出版:2007年3月発行)
 という本をぱらぱらと捲っていた。
 誰の装丁になるものか、使われている写真が秀逸である。
 それは犬、猟犬なのだが、中には街角に積み上げられたゴミの上にとまる烏の姿も効果的に使われている。 
 
 
 
■ 内容は。
 ひとことで言うにはやや饒舌である。
 訳者の青木氏がその後書きでまとめられているように、ヤングはラディカルな「社会民主主義者」だと評して良いものか。
 必ずしもそうとは言いがたいような気もするが、例えば我が国の代表的な社会民主主義政党の方が同書の書評を掲載しているところをみると、いささかの親和性はあるのだろう。
 とはいってもその方の文を読んでいると、評というのは畢竟自らを語るものだという言葉を痛切に思い出す。 
 
 
 
■ ヤングの同著は文化論が優れていた。いわゆる現状分析である。
 社会が包摂型から排除型へと移行したと。
 雇用が正規と非正規とに分かれ、それは決して交わらない道となる。
 同一のクラス、グループの中でも絶えず競争と緊張とが生まれ、ベースには相対的剥奪感が充満しているという。