国策の果て 3.
■ 後に中国残留孤児問題と言われるものの萌芽が、角田さんの同書にはある。
一年目は野ざらし。二年目になって白いものが丘の中に散見し、それが集団で遁れた人たちの骨であるという記載があっさり挿入されている。
戦争文学に私は詳しい訳ではないが、いわゆる引揚文学と呼ばれるジャンルがあるそうで、それについてはいずれと思いながら時間だけが過ぎる。
■「国とは、そんなものではない、と松三はいってやりたい。
ケリなどのつけられる問題か。金で始末がつくことか。
それでは、どうすればいいのか。どうしてくれというのか。それは松三にもわからない。引揚者の中には、ケリなどつける必要のない人もいる。自力でケリをつけた人もいる。だが、どうにもケリのつけようのない人もいるのだ。努力が足りない、などとはいわせない。今さら、努力などではどうしようもない傷を受けた者のいることを、忘れないでくれ。
国が犯した大きなあやまちによって破滅した人間が、どうやってケリをつけるのだ」(前掲:283頁)