青い瓶の話。 
 
 
 
■ たとえば深夜、窓から漠然と月を眺めているとする。
 鉛筆のような高層マンションがあって、天井のシャンデリアの灯りも数えられるのだが、どうも棲みたいなという気分にはならない。
 例えば港区にはいくつもの細かな坂があって、これは無理だろうと思えるようなところを昇っていくと、しっかり車が入っていたりして驚く。
 それがSクラスだったりすることもあるのだから、小廻りというのは要だった。
 平べったいジャガーの四眼辺りだと、多分曲がりきれない。 
 
 
 
■ そうしたところに、崩れかけたビルというかアパートというかかがあって、いつも心惹かれる。
 こういうところに独りで隠れていたいな。
 という、半隠遁願望が幼児的なかたちをとって顕在化するのである。
 でもねああた。
 さんざんそういう暮らししてきたでしょ。
 どこからかそうした声が聞え、それがリエゾンになっていく。