すれすれ。 
 
 
 
■ 宮部骸骨の名を知ったのは、確か野坂さんの小説だった。
 野坂さんはこのところ按配が悪く、表の座敷にはふくよかでたいへんお綺麗な奥様が出席されていた。男女の間柄というか夫婦というか、その綾について、思うところは多々ある。 
 
 
 
■ 倒られてからの写真は確か荒木さんだったと記憶している。
 モノクロで、さすがにいい味を出されていた。
 口元の辺りに気配が残ってもいるのだが、トレード・マークのサングラスをかけ、白いスーツとソフトで斜に構えている風情は、若造だった頃にその活躍を眺めていた身には懐かしかった。
 宮部骸骨には、関東大震災の際、稀有な新聞というかなんというかがある。
 とんでもない編集者でありクールな反骨者でもあり、時間があればそれを手繰ってもみたいのだが、ええと、日々すれすれ。