風景と男と 2.
 
 
 
■ スロープをメルセデスのW124/E500が下ってきた。
 初期型だろうと思う。グリルが大きく、垢抜けてはいない。
 見事に手入れされていて、ドライバーは初老の紳士である。顔は見えなかった。
 私はといえば、チャックの部分が壊れた黒いバックを持っていた。
 中には資料の山が入っている。普段使っているカメラバックを型に、カーボンの三脚を片方の手で握っていた。
 すこし腹が減っている。
 
 
 
■ グレーの500Eの後部座席には、細い姿が影になっている。
 少女であるかもしれない。ふたりいる。
 タイルの上をスキール音をさせずに曲がり、向こう側にいく。
 別になんでもいいのだが、こうした風情は好きである。
 半ば痩せ我慢のような気もする。