うたかた 2.
■ 美意識というのは場合によっては半ば病んでいるようなところもあって、戻ってくるのに難儀する。
若い頃、英泉の浮世絵が気になって、その仔細な睫の描写や紫を加えた紅の辺りに惹かれた。いわゆる退廃美である。
いい歳になってくると、英泉もやっぱりお坊ちゃんだったのだろうかという感想が混じってくる。退廃は少し脇に置いてという按配である。
退廃的ということと本物の退廃とは別のものだからだ。
なんにせよ、表現するには一度こちらの世界に戻ってこなければならない。