阿呆面のお前たちとどこかでばったり出会っても
そしらぬ顔でいような 2.
■ ワイルダーに子供はいなかった。
いたのであるが、遠く離れたところにいた。
そのことが作品に微妙に影響しているという指摘もある。
都会の独身者の御伽噺。
例えば「アパートの鍵貸します」という作品は「他人の情事のぬくもりが残るベットに一人もぐる男の物語」である。
この辺り、具体的に想像していただくと結構神経に堪えるところがある。
リンダ・ローリングが去った後、枕に残った長い髪の毛を一本を拾い上げて名台詞を呟くマーロウ、なんていうロマンチックなものではない。
■ ジャック・レモン演じる主人公はその間、バーでマティニを飲む。
時間の推移が、オリーブを挿してある爪楊枝が並んでいくことで表現される。
飲まずにいられるかという按配で、ほぼジンそのもの。ノエリー・プラットが数滴。
後にウォッカを使うようになったと、ワイルダーの二度目の配偶者、オードリーは言っていた。