阿呆面のお前たちとどこかでばったり出会っても
そしらぬ顔でいような。
■ ワイルダーは、ユダヤ系であった。
ポーランドに生まれている。
緑坂を読まれている方には、半分はそれで通じるところがあると思ってもいるのだが、アンジェイェフスキの小説「灰とダイアモンド」の舞台もまたポーランドであった。
ワイダ監督の元、映画化されている。
私が不機嫌になっていったことが、そのことと関係があるのかどうか。
そんなことは知らないが、ヘップバーンにしてもディートリッヒにしても、少し辿っていけばどうしたってあの時の戦争、ナチとの関わりが水面下に沈んでいるかのようである。
ハリウッドに関わらず、映画という存在そのものがそうしたものではあるのだけれども。
■ ワイルダーの皮肉やウィットは、非常に洗練されていた。
いくつかの作品でケイリー・グラントを使いたかったと、その感じはよく分かる。
「サブリナ」ではグラントの代役がボガートで、そのためボガートは最後までワイルダーとぶつかったというエピソードは有名である。「昼下がりの情事」でもグラントの代わりにクーパーが演じた。
が、今いくつかの作品を思い出してみると、ここでグラントが演じていたら半ば出来すぎになってしまうところだったような気がしないでもない。
チャンドラーも、フィリップ・マーロウを演じるのはグラントがいいと言っていたらしいが、その辺りもワイルダーと一脈通じる感じがある。