ノーテン、ファイラー。
 
 
 
■ アイヤー、脳袋壊了。
 というのが正式らしいのだが、この当時の流行語のひとつらしい。
 先の「七変化狸御殿」は昭和29年。終戦後9年目の作品である。
 ちなみに今から9年前というと、あらまドウシタラヨカロという按配で、たったそれだけしか経っていない。
 劇中、農地解放みたいな台詞も飛び出したりして、世相であった。
 
 
 
■ 若いフランキー堺さんが、狸の役をしてドラムを叩く。
 その隣で、美空ひばりがすさまじく太い二の腕で、背中に蝶の羽をつけてJAZZを歌う。
 楽しいクリスマスという代わりに、楽しいお正月、なところがわが国である。
 歌はとんでもなく旨い。
 向こうだったら、エラ・フイッツジェラルドの若い頃、と言っても通ったかもしれない。
 この時ひばりはいくつだったか。思春期半ばというところ。
 正面から撮っていると、やはり狸にも似ている訳である。