三一 待っている
 
 
 
 
■ 夕刻、上海大厦に戻った。
 葉子が部屋に待っていた。浦東の高層ビルにひとりでいるのが耐えられないのだと言った。走羽は腕を交差させ、中国式の挨拶を葉子にしていた。私は始めてみる。
 フロントに電話をすると、案の定メールが届いていた。ボーイに持ってきて貰い指先で開けると、昨日と同じ便箋である。北沢からのものだ。
〈上海夜星〉という、先頃できたばかりのディスコで待っているという。今日は英語で書かれている。
 
「つまりはそういうことだ」
 私は走羽と葉子の顔を見渡した。
「ゆくんですか」
 走羽が尋ねた。
「ああ、顔見せってことさ」
「襲ってきますよ」
 そんなことはわかっている。だから銃を買ったんだ。
「わたしもゆくわ」
 葉子が口を挟んだ。短いスカートにTシャツ、手にはベレッタを持っている。眼がつり上がっているように思えた。
「まあいいや、時間はまだある」
 私は上着を脱いでシャワーを浴びることにした。