■ 私たちは黴臭い階段を昇り、二階のゲームセンターに入った。十代の少年達で混んでいる。射撃の腕前を吉川と競う。画面に現れる一般人を撃つと減点である。吉川は出てくるもの全てを撃つ。旨いのだが死亡率も高い。
晃子は車をドライブするゲームに座っていた。忙しくアクセルとブレーキを踏んでいる。真剣だ。ヒールの踵が折れるのではないかと思われた。
蝋人形館の中で写真を撮った。晃子が使い捨てのカメラを買ったのだ。私も吉川も口をあけ、後ろに並んだ光沢のある人形と同じポーズをとった。晃子はモンローの真似をしている。その前に口紅を直している。若いカップルがなにかを言いたそうに私たちを眺めている。
その上にある展望台に昇った。
黒くなりかかった空にオレンジ色の雲が斑になっている。海の方角から細い月が昇ってきて、配下にある無数のビルには全て灯りが点いていた。
テーブルに座り、ビールを頼んだ。
「土産物を買ったのか」
吉川が言う。
「絵葉書とキーホルダーは買った。小さな電球の点くタワーの模型がほしいんだ」
「田舎もんだ」
「ベットの傍でちかちか点滅してるのって泣けるじゃないか」
「吉川さんは、娘の写真を置いてあるのよ」
吉川の別れた妻は、晃子にそっくりだという。娘がひとり神奈川にいるらしい。二十歳近くになっているだろうか。
廻りが暗くなってきた。子ども連れや年寄りが消え、残るのは背中にバックを背負った若い男女だけになった。
「タワーって、年増の厚化粧みたいだわね」
私たちはタワーを降りた。車を拾い、霞町の小さなバーに入った。