五八 墜落
 
 
 
 
■ ハインドが目の前で急降下した。気が付くと浦東新区を一周し、電視塔が反対にみえる処まで出ていた。下は黄浦江だ。
 軍用ヘリの馬力はすさまじい。
 急降下から急旋回し、イロコイの前にその鼻先を向けた。ホバリングして空中に停止している。
 
 私たちは黄浦江の上空数十メートルで向き合った格好になった。下は夜の黒い川だ。
 ロシア人のパイロットが吉川に合図した。無線機のスイッチをスピーカーに流す。
「そろそろ遊びも終わりにしましょう」
 北沢の声だ。鼻先の機関砲がこちらを向く。
 赤い炎がみえた。衝撃とともにガラスが割れた。
「とびこめ」
 私は大声を出した。ロシア人のパイロットが撃たれた。
 次はロケットだ。バラバラになってしまう。
 葉子の手を引き、イロコイのドアから外に飛び出た。
 吉川が続いたかどうかはわからない。
 長い声を引いて私たちは落下した。手と足がおかしな方向を向く。
 川面が近づく。
 その時、上空のイロコイが爆発した。