■ 左右に流れる夜の高層ビルの光景を、私は綺麗だと思った。
私は操縦席の屈曲したガラスから前をみていた。巨大な軍用ヘリが排気口を赤く染め、ゆっくりと左右に傾いている。ハインドの双発イソトフ・ターボシャフトの低いエンジン音が聞こえる。
イロコイ側面のドアを開け、吉川がコルトを何発か撃った。吉川もコルトが好きなようだ。葉子もAR一六を撃った。拳銃弾はとどかず、小口径ライフルの弾はハインドの分厚い装甲に小さく火花を散らせた。
「テールローターも装甲されてんのか」
ライフルくらいではどうにもならない。イロコイの脚に吊ったロケットは、一発目の反動で斜めに傾いてしまっている。