■ 転がったのは芝生の上だった。
唸りながら振り返ると二階建ての建物があった。下が女性用トイレになっている。清掃用具を入れておく小部屋が地下鉄に繋がっていたのだ。
私はモップを抱えていることに気付いた。捨てる。
「ここは何処だよ」
「公園ですよ」
走羽が後ろに立っている。私たちはよろよろと前へ歩こうとした。半袖ではすこし寒い。
その時、四隅から強力なライトが浴びせられた。
「不要走」
甲高い中国語が続く。拡声器の音だ。動くなと言っている。
目を細めそれから開けてみると、武装した中国軍兵士が並んでいる。カーキー色の制服を着ている。AK七四の銃口がこちらを向いている。